著者:リン グレアム (著), 萩原ちさと (翻訳)
[あらすじ] ホリーは乳母車を押しながら、寒さと空腹と恐怖に襲われていた。深夜の一時だというのに、生後八カ月の赤ん坊をかかえ、ロンドンの街をもう何時間歩きつづけているだろう?子供の父親に捨てられ、行くあてもない。このままでは……。物思いにふけっていた彼女は交差点に近づいていると気づかなかった。
次の瞬間、車道との段差に足をとられ、ホリーは転倒する。同時にすさまじいブレーキ音とタイヤのきしる音が街角に響いた。リムジンから飛びだしたイタリア人の富豪リオ・ロンバルディは、頭を打って意識を失った、幼いとさえ言える若い女性の姿を目にした。
彼はほんの一時間前、自分を裏切った女性と婚約を破棄したばかり。だが病弱な母親を落胆させないためにも、妻は必要と考えていた。数分前には、このあと最初に出会った女性を呼び止め、妻になってくれと頼もうかとさえ思っていた……。
「ぶつかったのか?」いや、姿が見えたときには既に速度を落としていた。「こんな時間師に赤ん坊連れで、いったい何をしていたんだ?」なんとも清純無垢な外見だし、彼女の指には結婚指輪はない。
財団が経営する病院に運ぼうとするが、ホリーは断固として断る。「警察はやめて・・・お願い」「君の代わりに家族に連絡しようか?ボーイフレンドは?」「誰もいません」その後大きく展開する二人の出会いはこうして始まった。
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