書籍名: 茜さす(上) [Kindle版]
著者:永井路子
ASIN:B00MPDBJ8W
[あらすじ] 永井路子さんは女流歴史小説家として有名ですが、本作は歴史に魅せられる若い女性を通して、飛鳥時代の女性の生き方と、執筆当時の女性のあり方を対比させて読ませる始めての現代小説です。
1986年、女性の雇用機会均等法などで女性が男性と同じように働くということもあるという時代に、新聞連載されました。主人公・友田なつみの通う大学は、在学中にお見合いで婚約して卒業と同時に結婚ということも珍しくないお嬢様大学だが、なつみはマスコミに就職したいと思っている。
なつみの名は湯原王の「吉野なる夏実の河の川淀に鴨そ鳴くなる山陰にし」の歌から取られたものなので、興味をひいた万葉集のゼミに所属している。
額田王と大海人皇子との間にやりとりされた恋の歌について、激しい解釈のやりとりがある。互いに夫や妻がいながら、その目の前で展開される恋歌として有名である。
このディスカッションの中で、天武天皇(大海人皇子)と持統天皇(鵜野讃良)が叔父と姪で結婚したことが指摘される。実は、なつみの叔母・圭子も叔父と知らずに恋に落ち、実父の弟と結婚していた過去がある。
戸籍上は祖父母の子となっていたので、法的には問題がなく、不幸も共に一生を添い遂げると決心していたが、夫がなくなりフリーの証券レディとして現在は仕事で活躍している。
なつみは優等生・香村絵美と京都や奈良をめぐる。旅で出会った紳士的な男性・泉は「なつみ」という男の子を亡くしたこともあり、なつみにとても親切にしてくれ、明日香を旅ささせてくれる。
卒業と同時に、就職に失敗した夏美は家事手伝いに、絵美はまったくの専門違いの研究室の秘書に、そして親友の杏子は証券会社に就職して、男性と変わらない生き方を選ぶ。
現代と古代の価値観がぶつかり合いながらも、自然となつみを通して古代の世界に入っていける。図や系図なども、必要な場所に挿入されて、歴史小説初心者にも優しい作りである。
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@kirabook さんの感想
歴史作家の永井路子さんの現代小説。とは言っても雇用機会均等法が始まったばかりで、女性は早く結婚するという時代のものなので、現代に比べると少し古い感じがするかもしれない。しかし、歴史はつながっているのである。飛鳥時代と昭和がつながるなら、昭和と平成なんて繋がって当たり前である。
この主人公たちの世代の一部は、現在は企業の管理職になっている女性もいるし、家庭で子育てを一段落させた人も居る。そういう色々な女性像を切り開いていった世代の人たちの、大学生時代を同次代に書いた作品で、その時代の空気のようなものがうまく伝わってくる。
魅力的なのが圭子おばさんである。彼女はさらに上の世代だが、能力、根性、自由、そして愛とは何かというものを、主人公に指し示してくれる。持統天皇に魅せられる主人公に、持統天皇なんて知らない叔母の言葉にが、持統天皇からの声として伝わるのが不思議である。それは、一人の独立した女性として生きたからこそ、共通の感覚を持てるのかもしれない。
そして、厳しい教授のツッコミで深さをます万葉の世界、だんだんと持統天皇の生き様が解き明かされる過程も楽しい。とくに万葉集は一句にこれだけじっくりと取り組んで読む機会が少ないので面白かった。
今、社会で働こうとしている女性、働いている女性にも、是非とも読んでほしいと思う