書籍名: 柘榴坂の仇討 五郎治殿御始末 (中公文庫) [Kindle版]
著者:浅田次郎
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[あらすじ] 浅田次郎が幕末から明治への変革に翻弄される武士を書いた短篇集・五郎治殿御始末の一篇。映画化作品ですが、予習として読んでも、映画を見てから読んでも楽しめて最後には泣けるのが、浅田次郎の素晴しい語り口である。
本作の主人公は、井伊直弼の駕籠回り近習として、桜田門外の変で主君が討ち取られるのを防げなかった侍・志村金吾。
金吾の両親は自害によって責を置い、金吾には仇討ちの命令が下る。あれから13年、時は明治6年となり、彦根藩もなくなり仇討ちしても何も得るものはない。しかし、妻に夜の酒酌をさせながらも、ひたすらに残党を探す金吾。
もう一人の元侍がいる。井伊の首級をあげた直後、切腹しようとして果たせなかった佐橋十兵衛は、直吉と名を変え車引きとなっていた。明治という時代になり仇討ちの禁止がでたが、そこに金吾がやってくる。十兵衛は、金吾の顔を覚えていた。
金吾が語ったように「期するもののないものの雌伏はただの逃亡者である」ということを十兵衛自身も感じていた。自首する場を失い、ざくろ坂の寒椿に誘われるように生き残った。一心に追ってきた金吾を載せて、互いの13年を語りながらの道行きが始まる。
十兵衛は、人を殺めるくらいならば、この男のために自死しようと決意する。しかし、それは金吾は「掃部頭様の下知に従い、お前は斬らない」という。13年前の一言の下知を守ろうとする金吾。十兵衛は、自分と同じように、金吾があの日に縛られて生きていたことを知る。
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@kirabook さんの感想
ありがちな仇討話だけど、やはり浅田次郎は上手いなと唸りながら読んでいたが、視点が追われる側に変わった瞬間の景色の変化がとても新鮮である。
追う側の気持ちというのは、端からみていても「もう辞めておけ。女房と幸せになれ」と言いたくなる部分と、それでも追わねばならないという男の気持ちも分かり、切ないばかりである。
一方の追われる側は、時代の変遷に安堵と不満を持っている。冬景色という背景が急に際立つのは、そこが戸外であり、起点となる事件を思い起こさせるからである。
最後はびっくりさせる仕掛けが有り、そこも流石となる浅田次郎らしい人間への優しい視点が光る。
期待を裏切らない作品を書き続けるということの凄さに敬服する。